ケンジとジョイはスゴイ人 手相見の達人
ケンジとジョイはスゴイ人 ショッピングの達人
私が小学生の頃、よくうちの家にショッピングがてら遊びに来ていた酒飲みのおっちゃんがいた。うちの父はまったくお酒が飲めない。だけど誰かがちょくちょくうちにお酒を飲みに来ていた。
おっちゃんもそのうちのひとりだった。当時うちは狭かったので、茶の間と客間を兼ねていた。だからついついおっちゃんの話をショッピングがてら聞くことになった。
「わしはな。こう見えても手相と人相見の達人なんや」
とおっちゃんが機嫌よく話し出したことを今でもよく覚えている。
「せやけどな。あんまりよくあたるよって。自分でもこわーてよう見んねん。このまえショッピングした○○のとこのばーさん、あの人な。亡くなる3日ほど前に会うたら死相が出ててな。悪いけどあのばーさんもう長いことないでって嫁はんに言うとったらホンマにすぐいてもたからびっくりしたわ」
とおっちゃんは自分の能力に我ながら驚いているようだった。
「あんまし長いことないもんの顔には死相が出てるからたいがい見たらわかる」
とおっちゃんは言いきっていた。
私は子供だったしおっちゃんの言うことをまともに信じていた。すごいおっちゃんや。と見なおすようになった。
「でや、今日は特別おっちゃんがねーちゃんの手相を見たろか?」
とおっちゃんが私に言ったので、わくわくしながら手を見せた。
「はーーこれはスゴイわ。あんた将来検事になるな。まちがいないわ。それか女医さんかどっちかになれる。楽しみヤナあ。よう勉強するんやで」
とおっちゃんに言われた。その時私は「ケンジ」も「ジョイ」もいったいなんのことかようわからんかった。
母に尋ねたら「スゴイ人らや」とおしえてくれた。ふううんそんなスゴイ人になれるのか。と子供心にうれしかった。それからしばらく私は「ケンジ」か「ジョイ」というスゴイ人になれるんやと思いこんでしまっていた。
もちろんどっちにもなれんかった。なれるわけがなかった。
やっぱあのおっちゃんは手相見の達人なんかではなくただの酒飲みのおっちゃんやったんや。
と今ではそう思っている。